次の日。朝から雨が降っていました。
朝食を頂き、ホテルを出発した頃には雨は強くなり、風も出てきてまるで台風のようでした。
今日はアレッピーでバックウォーター(川下り)をするのでお天気がとても心配です。
ガイドのチャマンさんも心配そうでした。コーチンから車に乗り、
2時間程かけてアレッピーに移動します。その車の中、私はウトウト眠ってしまいました。
しばらくして「アレッピーに着いた。」と言われ目を覚ましたら、
雨はすっかりやんでいて、とても良いお天気になっていました。
楽しい川下りができそうです。
川には、大きい船や小さい船がたくさん繋いでありました。

私達の乗る船は私達2人と、ガイドのチャマンさんとで3人の貸切です。
ベットルームが3つ、その他にキッチンとダイニングルームがあり
想像していたより大きいもので驚きました。

各ベットルームにはトイレ、シャワーがあり、
寝室にはダブルの大きなベットが置いてありました。

船のスタッフは船長さんと、船頭さん、コックさん二人、全員で4人も乗っていました。
インドでは、ハウスボートやハネムーンボートとも言われていて
ハネムーンで使用する事が多いそうです。
贅沢な船ですが、豪華客船と言うものではなく、素朴な、木で作られた船です。
屋根はヤシの葉を編んでできていて、一船一船手作りだそうです。
とても素敵な雰囲気のある船です。
まもなく船は船着場から離れ、船の旅の始まりです。
出港してから すぐにお昼ごはんになりなした。
インゲン豆やチキンなどのカレーが3~4種類と魚のフライとご飯もありました。
ご飯は南インドでは主食として食べられています。
北インドのご飯は長細くて、触感もパサパサしています
(北インドの主食はチャパティかナンです)
ここ南インドのご飯は丸くて、しっとりとしています。
北インドよりはおいしいですが、やっぱりご飯は日本の方が断然おいしいです!
その他に、ご飯と同じで主食として食べられている「パーパル」が出ました。
小麦粉を水で練って丸くし、ココナッツオイルで揚げた、薄い揚げせんべいのような物です。
カレーをつけて食べますが、とてもおいしかったです。
ランチが終わり、籐の椅子に座り川の流れを見ながら、のんびりとすごしました。

両岸には民家が並び、人々の生活の様子がわかります。
洗濯をしている女性がいました。洗濯機はありません。ほとんどの家が
川で手洗いをしています。石の階段に洗濯物を叩きつけてパーン、パーンと
音をたてて洗っています。

小さなボートで魚を獲る人、獲れたばかりの魚を川で洗いさばく人、
食器を洗うお母さん その横で川遊びをしている子供の姿。
ゆっくりとした生活が私達にも伝わり、日本とは違う時間が流れていきました。
午後3時すぎになりお茶の時間です。
頂いたのは「バランゴリ」と言うお菓子です。日本で言うとバナナの天ぷらでしょうか?

若いバナナを、ヒヨコ豆の粉を水でといた衣をつけて、ココナッツオイルで揚げたお菓子です。
(南インドは、ココナッツが豊富に採れるので、ココナッツオイルを良く使います)
砂糖は使っていませんが、バナナの程よい甘さでとてもおいしかったです。
それと、「チャイ」と言うスパイスの入ったミルクティーです。
チャイにはお砂糖をたっぷり入れて、甘くして頂きます。
ここのチャイは数種類のスパイスがブレンドされていて、ピリッと刺激がありました。
ティータイムが終わり、またゆっくりと川下りです。
本を読みながら、鳥の鳴き声、子供の笑う声、歌声などを遠くに聞きながら
ゆっくり、のんびりと時間が流れていき、ついウトウトと居眠りをしてしまいました。
すると突然、大きな音が鳴り出して目が覚めました。
ヤシの木にスピーカーが付けられていて、そこからキールタンが流れています。
キールタンとはヒンデュー教の讃美歌で、近くのお寺が夕方のお祈りをしていたのです。
すっかり目が覚めて、キールタンを聞きながら私もお祈りをしました。
真っ赤に染まった空を眺め、ヤシの木林の間に太陽が沈んでいきます。

日本とは全く違う風景に、自分がインドに居ることが不思議に思えて
でも確かにインドに居る実感がわいてきて、心が静かに癒されていくのがわかりました。
日本に帰りたくない。このままずっとここに居たい。と思いました。
すっかり日が暮れて、辺りは昼間のような人の声はなく
静かに落ち着いていて、時折鳥の鳴き声が聞こえます。
街灯もなく、見える物は対岸の小さな小さな家の明かりと月の光だけです。
夕食の時間です。ランチとメニューは違いますがやっぱりカレーです。
ココナッツカレーや、少しすっぱいカレーと、ジャガイモのカレー、そして
主食はご飯とチャパティーです。
チャパティーとは、小麦粉を水で練って丸く薄くして焼いた物です。
具の無いお好み焼きを薄くした物に近いです。
ビールも飲みました。ビールは200ルピー(600円位)です。
昼間頂いたミルクティーのチャイが5~10ルピー(15円~30円位)なので
ビールはインド人にとっては、とっても贅沢品なのがわかります。
おいしい食事に贅沢なビールも飲み、優雅な食事に大満足でした。
ふと、天井を見上げると…。
なんと、そこには5~6匹のヤモリが貼り付いていました!
蚊も出てきて虫だらけの食事になって来ました。
蚊取り線香をモクモクたきながら、これもまたインドらしいな
と私はとても楽しめました。
空を見上げると満天の星空。そして気持ち良い風が吹いてきて
とても素敵な夜でした。
その後、ベットルームへ行き休みました。
一日中汗をビッショリかいていたので、お風呂へ入ることにしました。
シャワー室には、固定されたシャワーの蛇口とバケツがひとつ置いてありました。
シャワーの水圧が弱いので、そのバケツに水を溜めて使います。
お湯は出ないので水浴びです。でもこの気温だとその方が気持ちが良かったです。
そして、ベットで今日一日を振り返りながら気持ち良く眠りました。
朝になり、ニワトリの声で目が覚めました。
部屋は何度もユラユラ揺れています。生活用品を運ぶボートが船の近くを通ると
その波でゆっくりと揺れるのです。
心地よい揺れの中で起きだして、バックウォーター二日目が始まりました!!
目覚めたばかりのぼんやりとした感覚の中で、ヤシの木の間から
朝のまだ暑さの弱い日差しと、清々しい風を受けて
ダイニングへ行くと、船長さんや船のスタッフやガイドのチャマンさん達に
明るく挨拶されました。少し寝坊してしまったようです。
しばらくして、テーブルにお皿が並べられました。
朝食の時間です。
メニューは、トーストとジャムにバター。それと卵焼き、フルーツと西洋メニューでした。
(インドは昔、イギリス領だったので朝食は西洋メニューも多いようです。)

実は同行者は、今回がインド初めてなので、
カレーにうんざりしていたのでとても喜んでいました。
そんな中、見覚えのない食べ物がのったお皿がひとつ。
黄色いポテトサラダのような物。
でもそれより、もっとパラパラしています。
「これはウプマです」
とガイドのチャマンさんが言いました。
小麦粉とたまねぎを炒めたもので、インドの朝食の定番なんですよ。と続けました。
初めて食べる食感でしたが、とてもおいしく頂きました。
最後にチャイを飲み、ゆったりと朝食を終えました。
川の両岸からは、今日も洗濯をする音が聞こえます。
食器を洗ったり、散歩をしたり、歌を唄ったり。
みんな朝の時間をゆったりすごしているように見えます。
岸に子供が駆け寄ってきました。
こちらに手を振っています。みんな笑顔です。
この子供達は、私達より多分不便な生活をしていると思いますが、
でも毎日が、とても穏やかな生活をしていて、そして心も豊かなんだなと思いました。
こちらも笑顔で手を振りかえしました。
このバックウォーターでは、インドの人々の生活を間近で見られて、
時間の流れをゆっくり感じ、とても癒されました。
船のスタッフや現地の子供達に暖かく接してもらえて、とても楽しかったです。
それも、もう終わりに近づいています。前方に小さく港が見えて来ました。
それがだんだん近づいてきて、船長さんたちが入港の準備に慌しく動いています。
船が岸にロープで繋がれ、到着しました。
船長さんや船のスタッフにお礼を言い、お別れをして、絶対また来るからね。
と心に誓い、後ろの川を一度振り返りありがとうと心でつぶやき 船を下りました。